ボートレーサー養成所とは？
ボートレーサーになるためには、厳しい養成所での1年間を乗り越えなければなりません。この訓練期間は、技術や体力だけでなく、精神力を磨くための試練の連続です。同じ志を持つ同期たちと寝食を共にし、互いに励まし合いながら過ごすこの1年は、一生忘れられない貴重な経験として彼らの心に刻まれます。
訓練所での過酷な減量と汗だくの日々
訓練生たちにとって最も辛いのが「減量」です。ボートレーサーは体重制限が厳しく、少しでも超過すると走ることができません。そのため、日々の食事制限や走り込みで体重を落とすことが求められます。養成所の乾燥室でのランニングは特に辛く、室温が40度を超える中、汗だくになりながら何周も走り続けます。ある訓練生は「体重計に乗るたびに胃が痛くなり、何度も心が折れそうになった」と語ります。
さらに減量中の食事はごく限られており、みんな少しでもお腹を満たすために工夫を凝らします。時には糖分が恋しくなり、食堂で出されるスティックの砂糖をこっそりと食べる訓練生もいたとか。普段なら「あり得ない」と感じるような行動も、養成所の生活では「どうしても耐えきれなくて…」と、つい手が伸びてしまうのです。
お菓子が唯一の楽しみ
厳しい生活の中での唯一の楽しみが、夕食後に開かれる売店でのお菓子購入です。食堂に併設された売店が10分だけ開き、その間にお菓子を買うのが日課でした。しかし、減量が厳しい中で甘い物に手を伸ばすのは厳禁。多くの訓練生が「今日は絶対に買わない」と心に誓っても、気づいたら売店の前に立ち、お菓子を手にしてしまうといいます。
また、お菓子を買うのは誰か一人が担当し、その人が訓練生全員分をまとめて教官に預けます。これは「不正を防ぐため」のルールでしたが、「教官に頼まれると緊張で冷や汗が出た」と当時を振り返る同期もいます。まさに、このお菓子タイムこそが、過酷な訓練生活の中での「小さな息抜き」だったのです。
減量のための涙ぐましい努力
養成所での減量は、日常生活にも深く関わってきます。お菓子を買っては食べたい衝動と戦う一方で、日々の食事も制限されています。カレーやラーメンなど「楽しみなメニュー」の日は、誰もが待ち望んでいましたが、減量中の訓練生は「炭水化物を避けるため、野菜だけを取って食べる」という厳しい選択をしていました。体重が増えるたびに食堂の誘惑に負けないよう意識しながら過ごしたといいます。
一方で、こっそりジャムやチョコを持ち帰る訓練生もいたとか。これらの食材を「ひと口だけ…」とベッドで味わう姿が時折見受けられ、養成所での厳しい減量生活がどれだけ辛いかを物語っています。
同期との絆と支え合い
訓練生活が厳しいからこそ、同期との絆も深まります。互いに励まし合い、支え合う姿が見られました。ある訓練生は、「同期の仲間と一緒にいると、厳しい訓練も乗り越えられる気がした」と振り返り、仲間との絆があったからこそ成長できたと話します。
忘れられない遠足と感想文
養成所では、訓練の合間に遠足や登山などのイベントもあります。ある年の遠足では、みんなで山登りに出かけ、普段とは違うリフレッシュができる時間でした。しかし、その後の感想文の提出には苦労したといいます。内容は「どれだけ楽しめたか」を書くものだったにも関わらず、「昼食で食べた弁当の箸に刻まれた151Aの文字」について詳細に記すなど、ユーモアあふれる感想文が多く、教官たちを困惑させたこともあったそうです。
感想文を埋めるために、行間を広く開け、一文字ずつを大きく書く工夫もされていました。養成所での生活では、「1文字1文字が貴重」なほどに時間が限られていたのです。
卒業までの試練と別れ
訓練生活が進む中で、次第に退所する同期も増えていきます。入所時に52人いた仲間も、卒業時には25人に減っていました。訓練の厳しさに耐えられなかったり、思うような成績を残せなかったりといった理由で去っていく仲間を見送るたびに、残った訓練生たちは自らを奮い立たせ、なんとか卒業までたどり着こうとしました。
こうして養成所で過ごした1年間が終わり、晴れてボートレーサーとしてデビューを迎えたとき、訓練生たちは過去の苦労と仲間との絆に感謝し、次のステップへと歩み始めます。彼らにとって、この養成所での厳しい経験が、未来のレースでの勝利と成長につながる大切な礎となっているのです。
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